中国のEC大手「拼多多(Pinduoduo)」が2024年の財務報告書を発表し、目覚ましい成績とともに成長鈍化の兆しも明らかになりました。
『雷達財経』によると、「拼多多は2024年に総売上3938億元(約7兆8700億円、1元=20円)、純利益1124億元(約2兆2500億円)を記録した」とのことです。これにより、同社の純利益はライバルである京東(JD.com)を大きく上回り、アリババに迫る勢いを見せています。
しかし好調な業績の一方で、成長ペースの鈍化も顕著になってきています。この記事では、「拼多多の売上と純利益の四半期ごとの増加率は明らかに減少しており、第4四半期の売上成長率は前年同期比で24.45%、純利益の増加率も17.9%にとどまった」と報じています。
その背景には、広告費や運営コストの増加があるようです。「2024年の総営業費用は1315億元(約2兆6300億円)に達し、特に広告宣伝費が前年比35%増加して1113億元(約2兆2200億円)となった」ことが伝えられています。売上が伸びても、それに伴う費用の増大が利益の成長を抑えている形です。
さらに、AI技術への取り組みが他社に比べてやや遅れていることも注目されています。アリババや京東がAI関連の技術開発に力を入れている中、拼多多は「ECレコメンド用の大規模言語モデル(LLM)チームを新たに設置した」とされているものの、外部への情報発信は控えめで進捗も未知数です。
注目すべきもう一つの変化は、拼多多を含む中国の主要ECプラットフォームが「消費者保護」から「出店事業者保護」への方針転換を進めている点です。拼多多は「出店事業者の取引環境を整備し、ビジネスの質を高める取り組みを始めた」と報じられています。
この動きは拼多多だけにとどまりません。アリババ傘下のB2B向けECサイト「1688」も「商品品質問題による即時返金」の制度を見直し、ルールをより公正な方向に改定。快手のECも「返品なしの返金」サービスを終了しました。
消費者の権利を守る一方で、悪意ある利用や不正な返金請求によって店舗側が損害を被るケースが増えていたことが背景にあるようです。
中国のEC業界は、競争が激化する中で“信頼”と“持続性”を重視した新たな成長段階に入っているようです。
拼多多のように、急成長から安定運営に舵を切る企業の動きは、今後日本のEC業界にも少なからず影響を与えるかもしれません。